今まで我慢していたものが堰を切ったように零れ落ちる。
涙が止まらず、良太は顔を上げられないでいた。
「そっか、ごめんね」
宇都宮はしゃくりあげる良太を優しく抱きしめた。
「大丈夫だよ、大丈夫」
あやすように言うと、宇都宮は腕の中の良太の頭を撫でた。
「すみません、俺、ガキみたいに……」
しばらくしてようやく落ち着いた良太は、宇都宮から離れた。
「いんだよ。ガキじゃなくても泣きたいときくらいあるし、いつでもこんな胸でよければ貸すからさ」
冗談めかして言う宇都宮は、ドラマの中よりかっこよく見えた。
「良太ちゃん、自分が何とかしなきゃって、ちょっと肩に力入り過ぎなんだよ」
今までみんなにもそれらしきことを言われてきたのだが、ここにきてやっと宇都宮の言うことばがすんなり良太の胸に入っていく。
「それに話さなくちゃいけない人にちゃんと言いたいこと言わないと」
言われて良太はハッとする。
そうだ、工藤から誘われた二度とも、仕事とかにかこつけて逃げたのだ。
きっともうダメなんだって思って。
「まあ、良太ちゃんの好きな人が俺じゃないってのはちょっと、いやあ、かなーり、残念だけどね」
そんな決め台詞を残して宇都宮はちょうど通りかかったタクシーを拾った。
「あ、鍋の約束は有効だよね、じゃあ、おやすみ」
良太はしばしタクシーが走り去るのを見ていたが、トボトボと会社のエレベーターへと向かった。
「出る幕がないってこのことだな」
良太がエレベーターに消えるのを見届けてから、木立の影から出てきた秋山はそんなことを呟いた。
「しかし、宇都宮さんて、素が既にカッコいいのか? 不自然さもなくあんな言葉を吐いて、わざとらしさも違和感がないとは」
首を傾げて感心しつつ、今さら駐車場に戻る理由を思いつく余裕もなかったため、秋山は仕方なくタクシーを拾った。
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