風そよぐ16

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 や、別に俺が焦らなくてもいいんだけどさ。
 なんか、本人たち以外にあのこと知ってるのは俺だけだし。
 や、だからって俺がどうの考えることもないんだけどさ。
 なんか、本谷、嘘の付けないやつっぽいし。
 ってか、そりゃ工藤が本谷のこと気に入ってもらっちゃ困るんだけど……。
 もう一度本谷を見ると、なんだか本当に緊張してるようだった。
「あの……」
「どうだ、今度の役は……」
 本谷が意を決したように隣の工藤に話しかけたのと同時に、工藤が本谷に話しかけた。
「あっ……はい、やっぱりまだてんで、ヘタクソで、皆さんにご迷惑かけてばっかで…」
 本谷の声は緊張しているからか、やけに大きく聞こえた。
 良太がえっと思ったのは、滅多にないことだが、珍しく工藤が誰かに声をかけたからだ。
 良太は複雑な面持ちで二人を見た。
 嫉妬が混じっていないはずもない。
 実際、妙に工藤の表情が柔らかくないか?
 だが、二人を見ていたのは良太だけではなかった。
「皆さんにご迷惑っての通り越してない? もう、ほんと、何回もリテイクとかやめてもらいたいわ。次あんなだったら、工藤さん、いい加減この人何とかしてほしいわ」
 良太の隣に座るこのドラマのヒロイン、竹野が毒舌をぶちかましたのだ。
 これには座がしらっとなった。
「おいおい、まあ竹野さん、こんなところで」
 なんて声が溝田あたりからあがるものの、「何でこんな人がこのドラマのメンツに入ってるのか、ほんとやってらんないわ」と暴走する竹野を止めようとする者はいない。

 


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