や、別に俺が焦らなくてもいいんだけどさ。
なんか、本人たち以外にあのこと知ってるのは俺だけだし。
や、だからって俺がどうの考えることもないんだけどさ。
なんか、本谷、嘘の付けないやつっぽいし。
ってか、そりゃ工藤が本谷のこと気に入ってもらっちゃ困るんだけど……。
もう一度本谷を見ると、なんだか本当に緊張してるようだった。
「あの……」
「どうだ、今度の役は……」
本谷が意を決したように隣の工藤に話しかけたのと同時に、工藤が本谷に話しかけた。
「あっ……はい、やっぱりまだてんで、ヘタクソで、皆さんにご迷惑かけてばっかで…」
本谷の声は緊張しているからか、やけに大きく聞こえた。
良太がえっと思ったのは、滅多にないことだが、珍しく工藤が誰かに声をかけたからだ。
良太は複雑な面持ちで二人を見た。
嫉妬が混じっていないはずもない。
実際、妙に工藤の表情が柔らかくないか?
だが、二人を見ていたのは良太だけではなかった。
「皆さんにご迷惑っての通り越してない? もう、ほんと、何回もリテイクとかやめてもらいたいわ。次あんなだったら、工藤さん、いい加減この人何とかしてほしいわ」
良太の隣に座るこのドラマのヒロイン、竹野が毒舌をぶちかましたのだ。
これには座がしらっとなった。
「おいおい、まあ竹野さん、こんなところで」
なんて声が溝田あたりからあがるものの、「何でこんな人がこのドラマのメンツに入ってるのか、ほんとやってらんないわ」と暴走する竹野を止めようとする者はいない。
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