青山プロダクションオフィスでは、やきもきしながら電話を待っていた鈴木さんが、コール二回で電話に出た。
「あ、はい、本谷様、あいにく広瀬も工藤も今日はオフィスに戻って参りませんが……」
本谷という名前に反応したのは、傍でお茶を飲んでいたアスカだった。
「あたし出るわ」
アスカは鈴木さんから受話器を受け取った。
「中川です。本谷くん?」
「あ、すみません、広瀬さん、どうですか? 俺、心配で………」
本谷はアスカが出るとは思っていなかったので少し驚きながらも尋ねた。
「大丈夫みたいよ。さっき病院行ったら、検査したけど、脳震盪だって。今夜一晩は病院だけど。ありがとう、わざわざ」
それを聞いて本谷はほっとした。
「よかった……。なんか、俺のせいで、ホントに、すみません」
「あなたのせいじゃないから、そんな、気にしないで。良太はちょっと忙しすぎだったから一日二日休んだ方がいいのよ」
「あの、俺、お見舞いに……」
「ああ、ほんとに気にしないで。今、工藤さんがついてるし、大丈夫、ありがとう」
「あ、じゃあ、お大事になさってください」
本谷は電話をきってから、しばらく放心状態だった。
工藤さんがついてるし。
アスカがさらりと言った言葉は、本谷の推測を裏打ちするものだった。
社長が社員を思ってくれるってのは、あることかもしれない。
「けど、社長が、しかもあの、工藤さんが、いくら大事な社員といったって、ついているって……やっぱ………な…」
そういえばと、京都でのアスカとひとみの会話を思い出した。
あの時、工藤には付き合っている人がいるらしいことを知らされた。
それも、いきなり現れたあの実は超美形の、小林千雪がそうなのかと、あの人にはかなわないと、漠然とは思った。
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