風そよぐ167

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 夕方、青山プロダクションのオフィスでは、鈴木さんとアスカ、それに駆け付けた小笠原や谷川らが落ち着かないようすで、何杯目かのコーヒーを手に秋山からの連絡を待っていた。
 一度、良太の検査は終わって異常はないようだが、今日は病院に泊まることになるという連絡は入っていた。
 ただ、依然意識が戻らないというので、仕事の合間を縫って集まった面々は気が気じゃない様子でじりじりと時間がたつばかりだった。
 その時、オフィスのドアが開いて、入ってきたのは小林千雪だった。
「良太、まだ戻れへんの? 容態は?」
 千雪は三時過ぎに東京に戻ってきたのだが、京助の運転する車の中で、タブレットを見ていて、撮影現場で事故、などという大仰なタイトルが躍るネットニュースや関連の情報がSNSで飛び交っていて、たまたま見つけた画像で良太を抱えている工藤だと察知して、早速オフィスに連絡を入れていたのだ。
「ああ、大丈夫みたい。検査は一応、まだ目が覚めてないだけで」
 アスカが答えた。
 連絡は佐々木オフィスの直子やプラグインの藤堂からも何度か入っていて、鈴木さんより早くアスカが電話に出て、同じようなことを伝えていた。
 大挙して病院に押し寄せるわけにもいかず、待っていろと秋山に釘を刺され、仕方なくみんなここで待機していたのだ。
 やがてまたドアが開いて、秋山が姿を現すと、「どうだった?」と皆が一斉に立ち上がった。
「目が覚めたみたいですよ。腕も打撲で済んだようだし、今日ゆっくり休めば大丈夫でしょう」
「工藤さん、ついてるの?」
 アスカが聞いた。
「工藤さんも、ちょうどいいんじゃないですか、働きすぎだから休めばいいんですよ」
 秋山の言葉に胸を撫でおろして皆が頷いた。
 鈴木もようやくほっとした顔で、コーヒーを入れ直すためにキッチンに向かった。
「あの、すみません」
 皆が口々に今朝の事故のことを話していたので、ドアが開いたのに気づかなかった。

 


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