風そよぐ171

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「あ、マネージャーも気にしてて、でも俺が勝手に来ちゃっただけで……すみません」
 本谷がまた頭を下げる。
「まあまあ、皆さん、良太ちゃんのこと心配されるのはわかりますけど、ちょっと落ち着きましょう。お茶をどうぞ」
 イラついた空気を和ませたのは鈴木さんのおっとりとした言葉だった。
「亜弓さんも、どうぞ」
「ありがとうございます」
 ようやく緊張を緩めて亜弓は鈴木さんに促されるままソファに座った。
「佐々木さん、沢村さんも、本谷さんも、わざわざお疲れのところいらしてくださったんでしょう、どうぞ、お座りになって」
 鈴木さんが持っているトレーにはきれいな色のアイスコーヒーとアイスティーの入ったグラスが乗せられている。
「そういえば今日、お前、横浜で試合だったんじゃないのか?」
「終わってすぐ、親戚が危篤でって言って飛び出してきた」
 佐々木に呆れた顔をされた沢村に、さらに亜弓が「よくそんなどこかで聞いたようなウソつけるわね」ときつい言葉を投げかける。
「うっせえな、今日は四の三で一本でかいのも打って、チームも勝ったんだからいいんだよ」
「ほんと、その不遜な言い方、何でそんなに子供の時と変わってないの?! まあ、お兄ちゃんも変わってないけどね」
「うっせえな。お前こそ、キリキリ怒鳴りつけてんだろ、ガキどもを。よくそんなんで教員なんかやってるな」
「余計なお世話よ。ちゃんとガキどもに慕われる有能な教師やってるんだから」
 またぞろ言い争いを始めた二人を制して、「まあまあ、天敵いうんは沢村と亜弓さんのことなんやねぇ」と佐々木が呑気に口を挟んだ。
「あの、失礼ですけど、佐々木さんはモデルさん、とかですか? 男の方なのにすごくおきれいだし」
 少し顔を赤らめながら亜弓が尋ねた。
「そう思うのが素人の浅はかさだ、この美貌にして天才クリエイターなんだよ、ざまみろ」
「何を沢村が威張ってんのよ!」

 


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