風そよぐ172

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 二人が幼稚な言い争いをしているところへ、またドアが開いて長身の男が入ってきた。
「こんばんは、良太ちゃん、ケガしたって聞いたから」
 多人数が集っているのを見まわしてそう呟くように言ったその男を見て、「ウソ! 宇都宮俊治! ホンモノ!」と亜弓が両手で口元を覆って立ち上がった。
「宇都宮さん、わざわざありがとうございます。もう大丈夫ですよ。検査もしましたし、脳震盪だろうってことです」
 秋山が説明すると、ようやく宇都宮もほっとした顔をした。
「それはよかった」
「あの!」
 宇都宮はウルウルした目で見上げてくる美人に顔を向けた。
「兄を御存じなんですか? わざわざありがとうございます」
「え、兄って、ひょっとして良太ちゃんの妹さん?」
「はい! 初めて兄がこういう仕事しててよかったって思いました! お目に書かれて光栄です」
「こちらこそ、よろしく。良太ちゃんにはお世話になってるんです」
 にっこり笑って宇都宮は亜弓を見つめた。
「ちゃっかりしてるとこは、良太を凌駕してるよな」
 ボソリと亜弓の背後で呟く沢村に、亜弓は振り返って口を尖らせる。
 アスカはこのやり取りにちょっと肩をすくめて千雪を見た。
 実は詳しくは秋山も語らなかったが、秋山から良太が宇都宮にごめんなさいしたとアスカは聞いていて、千雪にも一応知らせたのだ。
「あ、でも、秋山さん、グズグズしてると亜弓さんに宇都宮さんとられちゃうよ」
 アスカが秋山に耳打ちする。
「は?」
「とぼけちゃって。宇都宮さんは素がカッコいいって言ってたじゃない。秋山さん、シャープな感じだし、宇都宮さんとお似合いかも。応援するわよ」
 秋山ははあ、とため息をつく。

 


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