「あたしの誘いを断るとか、ほんといい根性してるわね」
「何分、鬼の工藤に鍛えられてるんで」
それを聞くとフン、と竹野は持っていたグラスを空にした。
最後の一言は、良太なりの彼女に対する宣言だった。
いや、それは本谷に対しても、なのかもしれない。
工藤が本谷に声かけるとか、クソって思ったのは確かだ。
俺にあんな優しい顔したことなんかないぞ。
工藤って、本谷みたいに思いのほか打たれ強くってヘタクソでも頑張ってるとか、そういうやつって手だしたくなるんだったりして。
俺なんか、もろそうだったし。
案外、男にもよく告られるって、俺や本谷だけじゃないってことかよ。
千雪さんだってそうだったしな。
あの横暴京助が傍で目を光らせてるから今はないにしてもさ。
工藤、あちこちに女いるんだかいたんだか知らないけど、実は女だけじゃないよーん、とかだったりして?
良太は心の中でグチグチといじけている自分がいやになって、グラスを空にした。
「お、良太ちゃん、いい飲みっぷり。あ、こっち、お代わりね」
坂口がすかさず良太の酒を追加オーダーする。
「あたしも!」
隣の竹野もグラスを掲げた。
やがて二人の前に新しいグラスが置かれると、アスカが「ちょっと、良太」とそれを見咎めて声をかけた。
「明日、一緒にスタジオだってこと、わかってるんでしょうね? 寝過ごして遅れましたとか、やめてよね!」
こちらも竹野に負けじとというわけではないが、聞きようによってはきつく聞こえるだろう。
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