風そよぐ19

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「わぁかってますよ。寝坊していつもギリなのはアスカさんじゃないっすか」
「なーによ、良太ってばナマイキ」
 アスカはこそっと言って、目の前のピザを取ってパクっとやった。
 アスカはアスカで、竹野が良太に目を付けたのではと老婆心から声をかけたのだが。
「アスカさん、ピザはそれだけにしておきなさい」
 今度は秋山からもチェックが入る。
「美味しいのに」
 アスカの心配をよそに、「カンパーイ!」と竹野が勝手に良太のグラスに自分のグラスをぶつけると、別に息を合わせたわけではないのだが、竹野と良太、二人してグラスを一気に空けた。
 その様子を周囲は何気に見守っていたことなど、自棄気味な二人にはどこ吹く風だ。
「おかわりー!」
 竹野が良太の分も勝手に追加オーダーする。
「そういえばさ、あなた前にアスカさんのドラマに出てたでしょ?」
 それまでは何とか素面を保っていた良太だが、そろそろ強いアルコールがまわりはじめていた。
「いや、それは、俺の黒歴史っすから、もう、忘れてください!」
「だーって、坂口さんなんか、結構いい線いってたのに惜しいとか言ってたわよ」
「だーから、もう、それはナシ! 俺なんかそれこそ、本谷さんなんか目じゃない、クソミソもクソミソ、ケチョンケチョンに言われましたからね。どのみち代打だったし、俺は番組作る方に進んでるんっす!」
「ええ? やってみたら案外いけるかもよぉ?」
 これで数敗目を空けた竹野も出来上がりかけている。
 さすがに竹野とケラケラ笑い始めた良太を見た工藤は、思わず、「あのバカ」と口にした。
 良太が竹野とああだこうだと言い合っている間、工藤は、身体を思い切りこわばらせている本谷に、「言いたいやつには言わせておけばいい」と声をかけ、「まあ竹野は若いが芸歴も長い。スルーしないで考えろ」と付け加えた。

 


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