良太は日比野や志村と話しながら、助手席に座って小杉とぽつりぽつりと話をしている工藤にちょっと目をやった。
この間見た時ほどのくたびれ感はない。
「まあ、こっちは及ばずながら俺が目を光らせてるから、羽伸ばしてくるといい」
昨日、『からくれない』の撮影スタジオから帰る時に秋山に言われていた。
みんな、事故にあって怪我をしたこともあるが、良太が忙しすぎたことを心配してくれていたのだ。
本谷は珍しくマネージャーの浜野が最後までついていて、結構生き生きと演技をしているように見えたから、まあ、大丈夫だろうと思う。
工藤のことはまた別の話だが。
本谷は割と真剣なのではないかと、思いはそう簡単に消えるものではないと思うからだ。
宇都宮のことも、まさかと思ったけれど、どうやら茶化していいようなことではない。
あんな風に拒否したあとでも、良太のことを心配してオフィスに来てくれたという宇都宮には心からありがとうを言いたい。
でも結局、病院でついていてくれて、高雄に来いと工藤に言われたことが嬉しくて、ホイホイ来てしまった。
しょうがないよな、俺ってこんなやつだし。
二日ほどだとしても工藤と一緒の空間にいられて、仕事を見ることができる。
それだけであんなにグダグダ考え込んでいたことがどこかへ行ってしまっている。
俺ってホントゲンキン。
大人数だが料亭の大広間で、かなり豪勢なランチとなった。
まだ仕事があるので、ビール一本程度までと監督の日比野に釘をさされたものの、撮影クルーたちもたまにこういうご褒美的な食事が振舞われるため大満足で仕事をしてくれる。
「カンパーイ!」
日比野も浅沼もテンションが高く、クルーたちと笑い合っている。
工藤がそっちのグループに行ってしまったので、話もできないなと思いながら桧山や志村にビールを注いでいた良太に、横から小杉がビールを注いでくれた。
「あ、すみません」
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