「ふーん。今はドラマのプロデュースとかやってるんだ?」
あまり表情は変わらない。
能楽師だから、能面みたいってことはないよな、と良太は匠を見て思う。
「まあ、ボチボチと。初めてやったのはスポーツ番組で、今も続けてます」
「そうか、野球やってたんだよね。でも野球やっててT大って珍しくないか?」
「野球も残念ながらプロ行けるような力なくて、T大なら曲がりなりにも六大学リーグでやれるじゃないですか」
「へえ、それってすごいじゃん」
表情は変わらない分言葉はダイレクトだ。
「何がです?」
「六大学リーグで野球やりたくてT大行くって、すごくない?」
匠は軽くグラスのビールを空けた。
「そうだったんだ」
二つ隣の席から奈々が口を挟む。
「謎だったんだよね、良太ちゃん、T大で野球しかやってなかったとか。でもそれでようやくわかった」
良太はハハハと空笑いするしかなかった。
「ライバルは関西タイガースで四番ですからね~」
つい悔し紛れに良太は、実は面倒くさい男の顔を思い浮かべる。
「え、沢村は良太のライバルだったのか?」
そのまま驚いてくれる匠の反応は新鮮だった。
「俺川崎でリトルリーグに入ってて、沢村のチームとよく対戦したんですよ。高校でもまあ。沢村は甲子園行く組、俺らは三流地区予選敗退組でしたけどね。運よくかどうか、大学でも。あ、でも、三振取ったことだってあるんですよ、あいつから。六割で打たれてましたけどね」
「ピッチャーか、いいなあ。俺、ガキの頃から稽古ばっかで野球とかやらせてもらえなかったから、羨ましいぜ。ガキの頃はテレビとかネットでこっそり野球見てた。ニューヨークの大学行ってからだぜ、本物の野球見たの」
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