風そよぐ193

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 良太がそんなことで頭を悩ませていると、「良太、ちょっと来い」と工藤が呼んだ。
「あ、はい」
 良太は箸を置いて立ち上がった。
「何ですか」
 工藤のところに出向くと、工藤はタブレットを取り出して、クラウドに置いているスケジュール表を見ていた。
「え、CMですか?」
「今しがた、オファーがあった。小笠原、九月はどうなってる」
 大手家電メーカーHIDAKAのエアコンのCMだという。
「志村の方はこの辺りに入れられるだろう。『田園』の北海道ロケ俺が行く予定だったが、お前が行くか? あるいはお前がこっちのCMにするなら、最初からお前でいった方がいいな」
 どちらかというと北海道ロケの方が、慣れたスタッフと一緒なのでやりやすいだろうけれど、CMを工藤が担当することになると、ただでさえいっぱいいっぱいな工藤のスケジュールがもろタイトになる。
「CMやります」
「だったら、明後日東京に戻ったら、HIDAKAへ行け。広報部長とアポを取ってある。プラグインの河崎には連絡した」
「わかりました」
 河崎か。
あまり気を抜けない人だよな。
 と、いきなり工藤が良太の頭を掻きまわした。
「全力でやらなくていい、肩の力を抜け」
 何だ、と思って顔を上げると、工藤がそんなことを言った。
 珍しく、目に優しさが宿っていた気がするのは気の迷いだろうか。

 


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