「野宮神社あたりへ」
運転手に工藤が告げ、ちょうど混む時間帯で神社近くの通りで降りた頃には夕暮れが近くなっていた。
「神社行くんですか?」
良太は野宮神社と矢印にあるのを見て工藤を見上げた。
「その先に竹林があるだろう。そこでまたロケだ」
「ああ、そういえば、以前、千雪さんと行ったことありました。あの、『春の夜の』のKIRIYAが京都に行かないで曲なんかつくれるかってんで、さっと通っただけでしたけど」
二人は石畳の路地を神社の方へと歩く。
KIRIYAは良太にとっては黒歴史パート二くらいな思い出したくない相手だが、それでも出来上がった音はすごかった。
「今回、音はクラシックだ。匠がビバルディがいいというので、おそらくバイオリン協奏曲あたりをやることになるだろう」
「ビバルディ、ですか」
やれやれ、能にビバルディって、どんだけ芸術に親しめばいいんだよ。
「わかるのか?」
「わかりますよ、四季とかでしょ?」
フンと工藤はせせら笑う。
ちぇ、わるかったな。一般人が常識的に知ってるくらいしか知らないんだよっ!
良太は心の中で喚く。
竹林に入ると、そこは確かに独特な風雅な世界を醸し出していた。
高雄の北山杉も奥の方はどこか別な世界へと続いているかのような不可思議なものを感じたが、薄暗い竹林の奥には何か潜んでいそうな怪しさもある。
「ほんと、日比野さんじゃないけど、京都って摩訶不思議なとこ、いっぱいありますよね」
すると工藤はハハハと笑う。
「何で笑うんですか」
「お前のその、幼稚園児から同じキャラだろうってのはいいんじゃないか」
「え、なんすか、それ! ガキよりもまだ下だっていいたいわけかよっ!」
工藤はそれには応えず、笑いを浮かべたまま歩く。
その時、どこかで雷が鳴った。
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