温泉に浸かったお陰でほんわかと、エアコンのきいた部屋で良太は頭を空っぽにしてソファにもたれていたが、自然と瞼が落ちてくる。
ハッと飛び起きたのはドアチャイムが鳴ったからだ。
「お食事のご用意、よろしおすか?」
ドア越しに先ほどの女将らしき声が聞こえた。
「あ、はい」
良太がドアを開けると、料理の膳を掲げた中居二人を従えて、女将が立っていた。
「工藤、今風呂に入ってますけど、どうぞ」
和室のテーブルに二人の中居は豪華な京懐石の料理をてきぱきと用意していく。
「そうだ、濡れたスーツとか、クリーニングお願いできますか?」
「さきほどそのように伺いましたので、こちらにお洗濯ものお預かりします」
良太は女将からランドリーサービス用の袋を預かって、自分のスーツ一式を入れていると、女将が「お洗濯物みんなお預かりします」とニコッと笑った。
「あ、はい、じゃお願いします」
じゃあと良太は風呂のドアをノックして開け、「洗濯物、持ってってもらいますから」と風呂の工藤に声をかけると、脱衣かごの洗濯物をみんなランドリー用の袋に入れた。
食事の用意を済ませた中居と一緒に女将が退室すると、目の前に並ぶ旨そうな料理に気をそそられつつも、良太はとりあえず工藤が風呂からあがるのを待った。
昼の鱧しゃぶも旨かったが、これでもかと器が並ぶ京懐石に加えて、サイコロ状にカットされたステーキがまだジュウジュウいっているのに涎ものだ。
テーブルの上に瓶ビールが三本、冷酒が二本氷が入った器の中で冷えている。
それにしても女将の手慣れた対応といい、工藤がこの高級旅館のご贔屓さんなのは違いないだろう。
まさか、本谷と………。
いやいや、それこそアホな邪推ってやつだよな。
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