風そよぐ204

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 窓の外にはすっかり夕闇が降りていたが、雨は止んだようだった。
 雷の音も聞こえない。
「何だ、待ってないで食えばよかったのに」
 風呂のドアが開いて、工藤がタオルで頭を拭きながら出てきた。
「そういうわけにはいかないだろ」
 ぼそぼそと良太は反論する。
「ビールでいい?」
「ああ」
 良太瓶ビールの蓋をあけ、工藤が差し出したグラスにビールを注ぐと、自分のグラスにも注ぐ。
 何にともなく、グラスを合わせ、飲み干したビールはCMでいうようなセリフを思わず口にしたくなる。
 工藤も軽く空けると、「いいから食え」と瓶を持って二つのグラスに注ぎ分けた。
「いただきます!」
 一端箸をつけると、もう止まらない。
 このクルマエビうまいです、揚げ出し豆腐ってこんなうまいもんだったんですね、このナスって、京都のナスですよね、しばらく堪能してから、良太はそんなことを並べ立てる。
「しかもステーキ付きって、最高っすよね」
 きれいにステーキも平らげて、良太は工藤が注いでくれた冷酒を口に運ぶ。
「これ、うっまい」
 工藤は笑みを浮かべながら工藤にしては結構平らげ、冷酒を手酌で飲んでいる。
「でも、あれですよね、匠さん、そうゆう代々受け継がれてるとかの宗家なんかに生まれると、いろいろ面倒なことも多いみたいだし、何より野球もやれなかったなんて、俺、そんな家とても耐えられないな」
「まあ、お前はそんな面倒な家には生まれないだろうさ」
「なんすか、それ」
 頬を赤くして良太はムッとする。
「きっと生まれる前にお前ならここじゃねぇとかって、わかるんじゃないか」

 


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