風そよぐ213

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 打ち合わせが終わると、良太は撮影陣に別れを告げて京都駅に向かった。
「え、もう帰るのか?」
 そんな風に聞いてくる匠は何だか名残惜し気にみえた。
「またいずれ、顔を出しますので、よろしくお願いします」
 ひょっとして割と気に入られたんだろうか。
「良太ちゃん、無理しちゃだめだよ」
 バイバーイと奈々はいつも明るい。
 新幹線に乗ってしばらくすると、京都はたかだか二日ほどの滞在だったが、工藤と結構一緒にいられた気がする。
 もしか怪我のこととか心配して時間作って一緒にいてくれたりとか?
 出がけに工藤を振り返ったが、工藤は日比野や志村と話をしていて、良太を振り向くこともなかった。
 別に長の別れとかじゃないにしても、またきっとすれ違いが続くわけで、今日は富士山がきれいに見えるな、などと窓から眺めながら、良太はつい、あーあ、と口にした。
 オフィスに戻り、鈴木さんにお礼を言ってお土産を渡すと、いったん自分の部屋に立ち寄って猫たちのどこ行ってたんだよ、二日も、な歓迎を受け撫でてやってから、シャワーを浴びた。
 夕方からは『レッドデータ』の画像に、『ドラゴンテイル』の音を合わせる作業に立ち会うことになっている。
「気合入れて頑張んないと!」
 あ、そうだ、芸術にも親しまなきゃならないんだった。
 髪をバスタオルでこすりながら、ノートパソコンを立ち上げる。
「能、とビバルディだっけ」
 音楽はネットでダウンロードすればいいけど、能とかってのはやっぱ、どっかで観てみないとだよな。
 『レッドデータ』の制作スタジオにはドラゴンテイルの水野あきらと熊井漣も現れ、下柳と負けず劣らず音へのこだわりは半端なかった。
 最近は大体はわかるようになったものの、良太など音楽の専門分野に関しては傍で見守るくらいが関の山だ。

 


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