「言ってませんよ。言うんなら面と向かって言いますから」
良太が言い返すと、竹野はハハハと笑って控室に向かった。
竹野の姿が消えると、本谷が「やっぱ広瀬さんって、すごい」と言う。
「へ?」
「あの竹野さんに、ビシバシ言ってるって、周りでもこないだから広瀬さんのことすごいって話になってました」
今度は良太がハハハと空笑いをする。
「いやそれ、俺のは、虎の威をかるキツネってやつですから。鬼の工藤がいてこそってやつ?」
良太はまた本谷の表情を見て、あ、また余計なこと言っちまった、と思ったところで後の祭りだ。
「いいな、広瀬さん、工藤さんと一緒にいられて羨ましいです」
う、と本谷の思いに良太は言葉をなくす。
「は? へ、いや、あの、工藤なんて、オフィスにいればいたでさんざんっぱら怒鳴り散らすし、無理難題平気で押し付けるし、この仕事だって、いない時はお前が何とかしろとか、丸投げですよ丸投げ! ほんと冗談じゃないクソオヤジなんですから」
良太はそれこそ、さんざんっぱら工藤の悪口雑言を捲し立てた。
「でもそれって、広瀬さんを信頼してるってことでしょ? どうせなら俺、青山プロダクションに入りたかったな……」
「え、いや、あの………」
言葉がストレートなだけ、本谷の本気度が増している気がした。
「えっと、工藤、明後日には京都から戻るから、そのうちまたスタジオにも顔出すんじゃないかな」
口にしてから、おい、俺、何言ってんだよ! と良太は一人突っ込みをする。
「あ、じゃあ、俺はこの辺で。打ち合わせ、連絡しますね」
これ以上何だかいたたまれず、良太は早々にスタジオを後にした。
出る時、案外近くにいたアスカが何やらもの言いたげな顔をしたが、そのまま駐車場へと向かう。
ったく、どうしろっってんだよ!
自分だけ本谷の思いを知っているのが、何だか反則技のような気がして、しっくりこないまま、良太はジャガーのエンジンをかけた。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
