風そよぐ30

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 工藤は京都から戻ってきても、局やスタジオ、スポンサーとの会食や接待と、相も変わらずデスクにふんぞり返ることなく動いていたし、良太は良太で、レッドデータの制作で時間を取られ、なおかつメインスポンサーである東洋商事のCMの進行、加えて『パワスポ』と、いつものように工藤の送り迎えまでは手が回らない状況だった。
「『田園』の方は時々顔を出してくれ。俺も時間があれば覗く。あとはよほどのことがない限り俺の判断を待つ必要はない」
 そうのたまうと、良太の返事を背中に聞いて工藤はさっさと出かけてしまった。
 へえへえ、俺に丸投げするから適当にやれってことね。
 良太は心の中で憎まれ口をたたく。
 海外にいても日本にいても、どうやら工藤は東奔西走するのが当たり前らしく、結局良太はジャガーを、工藤はベンツを使ってそれぞれ別に移動することになった。
 工藤が出かけると、良太もオフィスを出た。
 東洋商事のCM打ち合わせには代理店プラグインの藤堂と良太、それにクリエイターの佐々木、それに音楽を担当するロックバンド『ドラゴンテイル』のボーカル、水野あきらの四人が出向くことになっている。
 良太が車でプラグインに寄り、藤堂と佐々木を乗せて、大企業の本社ビルが立ち並ぶ日本橋へとハンドルを切った。
 水野あきらとは現地で落ち合うことになっていた。
「なんか、良太ちゃん、やつれてへん?」
 後ろに座った佐々木が声をかけた。
「わかります? はあ、うちは万年人手不足ですからね。ここんとこ、工藤も俺もそれぞれの車で動いてるんですよ。工藤の顔なんかオフィスでろくにみたことないくらい」
「ああ、ヤギさんとスタジオに籠って、ひたすら画面を追ってるって?」
 藤堂が言った。
「はあ。それだけじゃなく、『田園』の方も工藤がいない時はほぼ俺に丸投げ状態」
 藤堂も佐々木も、無理しないように、と良太に憐憫の視線を向けてくれた。

 


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