「ちょとお、良太、最近、ド直球が過ぎない? 前は相手のこと考えて発言してたよね?」
「相手のことを考えて、発言してますよ」
へらっと返す良太に、「まったく、ド直球ってよりナマイキが過ぎない?」とばかり、アスカはツンとすまして紅茶を飲んだ。
「ここんとこ、さすがに疲れてるんだろう。今更アスカさん相手に考える余裕なんかないんだな」
タブレットから顔を上げた秋山が苦笑していた。
確かに、このオフィスでくらい、ああだこうだと考えたくないというくらい、良太は肉体的にも精神的にもかなりきていた。
梅雨の前のうっとおしい多湿な季節を迎え、気を引き締めていないと風邪を拾ったりしかねない。
栄養ドリンクもビタミン剤も胃腸薬も常備薬と化している。
『田園』では、確かにちょい役くらいに思っていたのが、やたらシーンが増え、科白ももちろん増えているわけで、自分だけではない、アスカもおそらく疲れているに違いない。
オフィスでくらい、文句の一つや二つ言ったって一向にかまわないのだ。
「携帯忘れたくらい、しょうがないって。そういうのフォローするのが俺の仕事なんだしさ」
良太はブツブツと独り言ちながら、アクセルを踏んだ。
スタジオに近づいて、駐車場の方へ左折しようとしたその時だった。
駐車場から入れ違えに出てきたベンツに気が付いた。
見覚えのある車に運転席を見ると、やはり工藤だった。
しかも、ナビシートにはなんと本谷が乗っていたのを良太は見逃さなかった。
「え? 何? 何で………?」
良太はアスカに携帯を届けてすぐに下柳のところへ向かったのだが、気もそぞろで下柳の話を聞き返したり、最後まで注意力散漫で下柳にはどうかしたのかと心配された。
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