「俺というものがありながら! とか、いうような間柄でもなんか約束をしてるわけでもないしな」
そもそも、あの告白大会を盗み聞きなんかしたからなのだ。
でなければ変に気を回すこともなかったわけで。
けどな。
「仮に俺はあんたの何なんだよ! って聞いたって、答えはわかってるし、部下、だ」
風呂から上がって缶ビールを手に、一人でそんなことを口にする良太を、二匹の猫は不思議そうに見た。
「もし、なんであの時、本谷、車に乗せてたんだよ? って聞いたとする」
良太は、そこで大きくため息をつく。
「お前には関係ないことだ、…………とか」
工藤なら言いそうだ。
「それ、言われたら、今回は、立ち直れるかどうかわからねぇ、俺」
良太はビールを飲み干して、バタリ、と絨毯の上に倒れ込む。
「寝よ」
翌日の午前中、良太はオフィスでデスクワークに没頭した。
仕事くらいきっちりやらないと、どこからか良太という存在自身が崩れていきそうな気配がした。
キータッチばかりが響き、黙々とノートパソコンに向かう良太に、鈴木さんも必要最低限しか声をかけてこなかった。
それから数日、工藤と良太はオフィスに戻ってきてもすれ違いが続いた。
ある日の午後、出かけようとしている工藤とばったり出会った良太は、久しぶりに、実際は三日しかたっていなかったのだが、工藤の顔を見てひどく嬉しかった。
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