風そよぐ39

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「小笠原のお世話で苦労しただろ」
「ちぇ、俺が極悪非道なやつみたいに!」
 良太の言葉に反応して、小笠原が抗議する。
「それよかさ、良太、今夜、飲みいかね?」
 小笠原は身を乗り出して良太を誘う。
「今夜? はまたヤギさんと編集だし」
「ちょっとくらい抜け出せるだろ? パーッとやって、ブロークンハートをふっとばしてぇの!」
 小笠原はチラリとニュースショーでも取り上げられたことがあったが、以前ドラマで出会った、主題歌を歌うミュージシャン岩永美矢乃と付き合っていたはずだ。
「何だよ、ブロークンって」
「別れたんだよ。ってか自然消滅? ってか、向こうに別に好きなやつできたみてぇで、俺はお払い箱ってことだな、俺が南の島行ってるうちに」
 珍しく神妙な顔で、小笠原は言った。
「本人に確かめたのかよ?」
「うーん、まあ、確かめるまでもないってか、美矢乃が『SUN‘S』のボーカルの赤石健人とここんとこしょっちゅう飲み歩いてるって、ダチが教えてくれて」
 何だか、そういう話は今の良太にはぐんと胸にこたえるものだった。
「ああ、そっか。まあ、今夜はちょっと無理だけど、明日とかなら」
「よし、決まり!」
 小笠原が突き出した拳にグータッチして、ライン入れるという小笠原のブロークンでも元気な顔を見て、良太はふう、とため息をついた。
「何だよ、良太もお疲れ?」
「みてわかるだろ、このクマ」
 そうだ。
 明日は、『からくれないに』の顔合わせあるんだった。

 


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