風そよぐ40

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 『田園』での撮影は終了したが、今度は『からくれないに』でもまた本谷と顔を合わせるのだ。
 こんなことなら、本谷とかキャスティングするんじゃなかった。
 といいたいところだが、客観的に見れば、本谷はベターな人選なのだ。
 っと、ああもう、やめやめ!
 本谷のこと考えるのナシ!
 良太は邪念を振り払い、デスクのノートの電源を落とした。
「これからお出かけ? 工藤と?」
 何の気なしな小笠原の言葉に、また良太の中で反応するものがある。
「いや、工藤はここ数日、京都。映画の撮影」
「ああ、あれ、『大いなる旅人』だっけ? あれ面白そうじゃん。俺、あれに出てみたいな~今度。工藤に言っといてよ」
「自分で言えよ」
 じゃあ、明日な~と手を振る小笠原に苦笑して、良太はオフィスを出た。
 下柳のところに行く前に、ここ数日覗いていなかった『田園』の撮影スタジオに向かうつもりだった。
 来週はまたロケの予定になっている。
「お、良太ちゃん、久しぶり!」
 スタジオを訪れると、休憩中の宇都宮がにっこり笑った。
「久しぶりってほどでも……いかがですか? 撮影の方」
「いや、順調、順調」
 二人の会話を聞きつけて「良太ちゃん!」と駆け寄ってきたのは山内ひとみだ。
「何か、このドラマ、あんまり笑うシーンないから、肩凝るのよね~」
「はあ、そうなんですか? あ、向こうに『スヴェーリエ』のパン置いてあります。美味しいんですよ」
 『スヴェーリエ』はプラグイン藤堂からの情報で、すんごく美味しい、らしい。
 藤堂はパティシェリーや最近人気のレストランなど、色々な店の美味しいもの情報をもっているのでほんとにありがたいのだが、お陰でしっかり良太も携帯でチェックしている。

 


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