「ご飯を食べるには仕事か。ほんと、基本だよな~」
独り言ちて、スタジオに戻ろうとした時、ポケットで携帯が鳴った。
「うわ、どうしよ」
カップを三つ持っているから電話にも出られないし、ドアも開けられないと思い当たって、良太はカップを階段の手すりに置いて携帯を取り出そうとしたが切れてしまった。
「え、工藤、いっけね……」
このところほとんど電話も入らない工藤からの貴重な電話なのに、と良太は慌ててコールバックする。
「あ、すみません、今『田園』のスタジオで……」
「撮影は順調か?」
「はい。何も、問題ないです。ヤギさんの方も何とか進んでます」
「明日、『からくれないに』顔合わせだったな」
「あ、はい。午後イチで。工藤さん、顔出すんですか?」
「いや、明日は高雄の方へロケだ。千雪にも顔出せって言っておけ」
「あ、わかりました」
そこでブチッと携帯は切れた。
いつものように、そっけない業務連絡である。
工藤の声を聞けるだけでうれしかったはずなのに。
そこで、工藤が『からくれないに』の打ち合わせに顔を出さないと言ったことに、何かしらほっとしているわけのわからない自分の感情を、良太は持て余した。
「すみません、電話、入っちゃって」
宇都宮とひとみにコーヒーを渡し、良太がまた自分の分を取りに行って戻ってくるなり、「ねえ、ロケの前にオフなんだけど、鍋やらない?」とひとみが言った。
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