「名刺出しても、受け取り拒否ったりとか」
「しません、仕事ですから」
千雪がああだこうだと逃げの理由を並べ立てるのに、良太は毅然ときっぱり否定する。
「なんか、良太、業界人間みたいや!」
「はい、業界人間です」
そんなやり取りをするうち、車はMBCテレビに到着し、駐車場へと入っていく。
「ここまできたからには、もう観念してください」
まだぐずっている千雪をナビシートから連れ出して、良太はエレベーターに乗せた。
「高雄って………」
エレベーターが上がり始めた時、ふっと良太は言った。
「高雄?」
「俺まだ行ったことないんですが、よく、北山杉なんかドラマとか映画に出てきますよね。なんか、風情があるっていうか」
「せやな。俺も好きやで。心が落ち着くいうか………、まあ、観光客がいない時やったらな」
「ああ、そうですよね、観光客、多いですもんね」
「何、行ってみたいん? ほな、一緒に行こか? これから」
良太ははあ、とため息をついた。
「はい、もう、着きました」
良太は千雪の腕を取ったまま会議室に向かう。
「原作者の小林千雪先生です」
会議室には局のプロデューサー、ディレクター、脚本家、そして主演の大澤流をはじめとする俳優陣がずらりと顔を見せていた。
ロケから慌てて舞い戻り、すました顔で座っていたアスカも、ちょっと驚いた顔で、千雪と良太を見た。
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