風そよぐ46

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 老弁護士御園生を主人公とするシリーズの映画を最初に青山プロダクションが世に出してから既に三作が映画化されており、爆発的とはいわなくてもそこそこの興行成績を残していに乗じているが、そのヒットに乗じてこれまでもテレビ局数社で並行してドラマ化されている。
 MBCでは御園生を映画より少し若目の設定で熟年俳優の端田武、手足となって動く若手弁護士海棠を大澤流がこれまでも演じている。
 同じシリーズを他局では映画と同様青山プロダクション所属俳優、志村嘉人主演で放映しており、流と嘉人は人気や演技でよく比較されているが、志村の方は極力原作に忠実に、大澤の方はどちらかというとアットホームさでより身近な雰囲気で人気があり、双方ともそれぞれ数字を残していた。
 千雪は会議の間、何か聞かれても、はい、そうですね、くらいで、あとは少しうつむき加減で静かにしていたが、知らない人間は黒縁眼鏡や少し癖のある髪を掻きまわしたそんなところばかりに目が行って騙されてしまうのだが、眼鏡の奥でしっかり人間観察なんかをしていたりするのだ。
 以前、一度映画の会合に千雪が出てきた時、ぼんやり隅の方にいて何も聞いていなかったような顔をしていたが、後でスポンサー陣に対する千雪の鋭い指摘に、良太は千雪に絶対侮ってはいけない底知れないモノをあらためて感じたのだ。
 打ち合わせが終わるとアスカやひとみは良太にちょっと声をかけてそそくさと帰ったが、千雪を送っていこうとした良太を大澤流が呼び止めた。
「良太、ちょっと」
「何ですか?」
 すると大澤は良太に寄ってきて、小声で聞いた。
「なあ、あいつ、大丈夫なのかよ?」
「は?」
 良太は振り返って、まだ座ったままぼんやりしている、あいつ、を見た。

 


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