風そよぐ47

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「本谷さんですか?」
「そうだよ。なんか最近やたらあちこち出まくってるけど、今回の役って結構キーマンだろ? 事務所に無理やりやらされたドラマみたい、周りがよいしょしてフォローしてくれるような現場じゃねぇだろ?」
 大澤としては最近しっかりした演技が定着して、この役にもかなり愛着をもっているようなので、ポッと出の新人にドラマを壊されたくないというのが本音だろう。
「大丈夫ですよ。本谷さん、人気だけであちこち出てるわけじゃないですから。どっかに姿をくらまして撮影に穴をあけるようなバカなことはしませんよ」
 すると大澤は、「あ、やっぱお前、あの時のことまだ根に持ってるんだろ」と言い出した。
「俺ががーがー言ったから、まさか、お前、もうドラマなんかやりません、とかってんじゃないだろうな? いいか、あの時は、もう暑くて死にそうで、撮影はタイトだし、ついつい文句が出ただけってか、それに何かお前妨害工作されてたって聞いたぞ?」
 何だか必死に弁解してくる大澤に良太は苦笑せざるを得ない。
「いやほんと、今は制作の仕事が面白いんで。二度と俳優なんかやりませんってか、俺にはそういう技量はないし」
「俳優なんかってお前、やっぱ根に持ってんじゃん。あれからあちこちの監督とか脚本家がお前を探してたって聞いたぞ。技量がないわけないだろうがよ」
「本谷さんは、ちゃんとそういう技量がある人ですから、心配ないです。工藤のお墨付きですから」
 尚も食い下がる大澤に、良太はつい、そんなことを口にした。
「工藤のお墨付き? あいつを買ってて、この役に抜擢したってか?」
 そう言われて良太はちょっと言葉に詰まる。
「いや、なんてか、工藤の場合、怒鳴り散らさなくなったら、その人を認めたってことなんだろ。本谷さん、これから成長していくんじゃないですか?」
「へえ」
「だから、まあ、科白はどうでも文句言わずに、演技、見てやってくださいよ、大澤さんももう実績あるんだし」

 


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