風そよぐ52

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「俺さ、結構ちゃらんぽらんやってきたけど、アッチのつきあいってだけじゃなくてさ、彼女にはかなりマジだったんだぜ? はああああ。でもな、やっぱ、ここ数カ月、すれ違いばっかだったしな」
 小笠原の言葉の中のキーワードがまた良太の心の奥で引っかかる。
 良太は慌ててそれを振り払うと、愚痴を言いながらも顔つきが変わってきた小笠原を見つめた。
 俳優の顔とでもいうのだろうか。
 青山プロダクションに入った当初やたらお騒がせで良太が迷惑を被っていた頃と比べれば、小笠原はかなり品行方正になったといえよう。
 それは仕事の上での評価にも現れてきているように、
「俺さ、なんつうか、仕事に入ると、その役にのめりこんじまうってか、役そのものみたくなっちまって、つい、彼女との連絡もおろそかになったってか……さ」
 そのせいだろうか、取材だけでなく、観光客のSNSから広まったらしいが、ヒロイン役の若手女優とデキている風な記事をネットに流されたりしたのを良太も知っている。
「最初は彼女もそれ見て誤解したってこともあったらしいけど、俺も一回そのことでデマだからって言ったし……でもそれから、彼女なんか不安になっちゃったらしくて、まあ、今の彼氏に会って、傾いてったみたいで。まあ、よくあることさな」
 小笠原はワインをこぽこぽと注ぐと、ゴクゴクと飲み干した。
「なんてーか、やり直せないかっても、すぐに言ってみたんだよ。でも、彼女、やっぱ無理だってさ。俺も、今の彼氏と幸せそうな画像、ネットで見ちまったし、心が離れてっちまった相手に追いすがっても、無意味だろ?」
 さっきから小笠原の科白は良太の胸にチクチク刺さる。
 そんな小笠原の話を聞いてやるのも、自分の仕事のうちだとは思うのだが。
「お前、最近いい顔つきんなってきたしさ、いい仕事してるのにな。うまくいかないもんだな」
 良太はボソリと言った。

 


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