良太は真中のことは軽井沢の平造から聞き及んでいたが、そんな風にあらためて聞くと生々しい気がする。
「そのうちおふくろさん病気で倒れて亡くなったらしいが、ムショから出たオヤジさんがまた怪我して真中のとこへ転がり込んできて、結局オヤジさんも亡くなって、組のもんが葬式とかやってくれたみてぇだが、それがわざわいしてアパートを追い出されちまって」
「なんか、俺、身につまされるな、それ」
「そんで、うちもなくなって、昔のワルとつるんでたところを、平さんに軽井沢連れていかれて、みっちりしごかれて、うちに入ったと」
「うん、それでも真中、しっかりやってるじゃん、今。それと、真中の彼女の話と何の関係が?」
「だからさ、中学高校と一緒の学校だった女子と仕事先で偶然出くわしたんだと。それも、高校の時とか、ヤクザの子供で遠巻きにされてたやつに親切にしてくれてた子なんだとさ、チクショーー!」
そこまで言うと、小笠原は声を大にして喚く。
「何で俺と彼女がダメになって、真中はラブラブなんだよ! こんな理不尽なことあってたまるかよ!」
「こらこら、わかったから、でかい声出すと、周りが迷惑するって」
良太はどうどうと小笠原をなだめに向かう。
「でもよかったじゃん、なーんか、真中、充実してんなぁ」
感心したように言って良太はグラスのワインを空けた。
「お前、喜んでやれよ! 苦労してたやつが幸せになるのを邪魔すんじゃないぞ、こら!」
「フン! てめーもどうせ充実してんだろうよ、チクショ! 周りはみんなラブラブハッピーなのに、俺は!」
それはどうかな、としばし良太は心の中で自問するが、まあまあ、とまた声が大きくなりかけた小笠原の肩をポンポンと叩く。
「そうだよな。ヤクザだから悪いとかじゃねぇ、『物事に良いも悪いもない。考え方によって良くも悪くもなる』!」
「何それ、急にハムレットしちゃって」
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