「あ、いや、業務連絡。来週、京都に来れないかとかって。いくら何でも無理だよ、レッドデータもあるし、明日から能登へロケだぜ? 魂胆はわかってるんだ、工藤、今度は京都の仕事も俺に丸投げするつもりなんだ。それで、またどっか海外の仕事に飛ぼうとか思ってるに違いないんだ。ったくあのオヤジときたら」
自分に言い訳するように、良太はあれこれと並べ立てると、グラスにあったワインを一気に飲み干した。
「なんか、お前、きょどってねぇ?」
「は? 何言ってんだよ、忙しいって話だろ?」
ちょっと鋭い視線を小笠原に向けられ、良太は懸命にごまかした。
「フーン、まあ、お前、ここんとこちょっと働きすぎみてぇじゃん。昨日鈴木さんに聞いたけど。ちょっと京都あたり行ってみりゃいいのによ」
「だから、明日能登行くって言ったろ? 明日は撮影なんだけど、明後日の朝、漁師さんに漁業体験させてもらうことになってんだよ。それに宿は温泉だぜ? プラグインの藤堂さんと佐々木さんとかと一緒だから、結構気が知れてるし、楽しみでさ」
「くっそ、温泉か! 俺も行きてぇ!!!!」
小笠原の興味はそっちにそれてくれたので、良太は心の中で少しほっとした。
「な、今度、温泉、行こうぜ? どっかで休み合わせろよ」
「さあ、いつになるかわからないけどな」
小笠原をタクシーでマンションまで送り、良太は会社まで戻ってきたのだが、何となくいろいろもやもやして、すぐに部屋に帰る気になれなかった。
小雨が降り出していたが、傘を差さなくてはならないほどではない。
「十一時か……」
足を向けたのは『OLDMAN』だった。
元々は工藤の行きつけのバーだが、良太には行きつけなんて店はない。
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