ただ、バーテンダーのオーナーとは顔見知りで、一人でも入れる店だ。
飲み過ぎて寝てしまって、工藤を呼ばせたなんて過去があるものの、それから顔を出してもオーナーは何も言わない。
コニャックの味がわかるほどではないが、濃厚な香りは好きだった。
温泉ね。
小笠原が言ったことが舞い戻る。
工藤も温泉にでも行ってちょっと骨休めすればいいのにな。
だが今、良太は工藤と一緒にいる自分が想像できなくなっていた。
心が離れてっちまった相手に追いすがっても、無意味だろ。
小笠原の言葉が今の自分に妙にしっくりくるのだ。
それに。
ふと立ち止まって見回すと、みんなその人の立ち位置で前を見据えて進んでいる。
小笠原しかり、アスカしかり、沢村も、佐々木さんも、当然千雪さんもだ。
俺って、何?
考えてみれば、この業界に入りたくて入ったわけじゃない。
とりあえず金になる就職口だったからだ。
もちろん、運転手、パシリ、雑用係、何でも屋でも構わない、けど、ちゃんと地に足つけてやってれば、の話だ。
大学の時だって、みんながあくせく就活してる時に、オヤジの工場継げばいいやくらいで甘いこと考えてたから、慌てることになったんだ。
オヤジの工場継いで、どのみち野球で身を立てるなんて無理だってわかってたし、せいぜい草野球でも続けていられればいいや、なんて。
そのくらいが俺の将来設計だった。
超甘いよな。
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