いつまでも、工藤の恩情に甘えて、楽な境遇に胡坐をかいていると、足元をすくわれるってことだ。
もっとちゃんとしないと、俺。
一杯を飲み干すと、良太はバーを出た。
雨はしとしとと降り続いていた。
「もう、梅雨になっちゃうのかなあ」
ガチャ、とドアを開けると、二匹の猫がナアアアアアンとなきながら良太を出迎えてすりすりする。
「わりぃわりぃ、遅くなってごめんなー」
どんなに落ち込んでても、この小さな二つのぬくもりが冷えた心を温めてくれる。
「だなあ、お前らのためにも、俺、がんばんないと」
良太はブツブツいいながら、二つの皿にウエットフードを分けて猫のテーブルに置いた。
この少し高めの猫のテーブルは最近ネットで買ったものだが、二つとも食べやすそうでいい買い物だった。
少し濡れたスーツをハンガーにかけると、風呂に湯を張っているうちに能登行の用意をしながら、良太はふとネクタイに目を向けた。
それは良太がプラグインの藤堂によいしょされていい気になってCM撮影に臨んだイタリアからの帰り、工藤が自分のものと一緒に買ってくれたタイだった。
片付けようと思いながら、タイを握ったまましばらく突っ立っていた。
視界がぼやけてきたのは知らず知らずのうちに流れた涙のせいだった。
「やっぱ、俺、行くっていえばよかったかな……京都………」
顔を上げると、Tシャツにパンツ一丁でタイを握りしめたまま涙をこぼしている滑稽な自分が鏡に映っていて、良太は苦笑した。
「カッコワリィ、俺………」
やっと我に返った良太は、手の甲でゴシゴシ目を擦ると、タイを片付けて風呂に向かった。
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