広いキッチンには端の方にちょっとしたテーブルと椅子が二客置いてある。
「どうぞ」
宇都宮は手なれたようすでコーヒーを入れると、二つのマグカップに注ぎ分け、テーブルに置いて、良太を椅子に促した。
「ありがとうございます」
広いからだろうか、静かすぎる空間。
外の暑さも寒さもこの部屋には関係なさそうだ。
「ここ、宇都宮さん一人で住んでるんですか?」
「そう、もうだだっ広いばっかでさ、いや、デザインしたのって、仕事で知り合った建築家でさ、俺がマンション買おうと思ってるって言ったら、ぜひデザインやらせてほしいって言われて任せたら、これ。ニューヨーク在住の人だからさ、こんなんなっちゃったわけよ」
宇都宮はただのイケメンではない、人を飽きさせない語り口といい、どちらかというと思い白い人だ、と良太は思う。
「二年くらい住んでるんだけどね、もう、できた当時のほとんどまんま。広いのはいいんだよ、だけど、物なさすぎってくらいで」
「俺なんて、十六畳くらいの部屋ですけど、それでも猫いなかったら広いって思いますよ。ほんと、誰か、一緒に住む人探した方がいいんじゃないですか?」
「あれ、良太ちゃん、ここに越してくるっていったよね? 夕べ」
「え? 俺、そんなこと、言いましたっけ?」
良太はぎょっとした。
また、酔ってバカなことを言ったんだろうかと。
「独り立ちして、一人前になるために、今の環境を飛び出すんじゃなかったの?」
そう言われてみると、そんなようなことを口走った気がしないでもない。
俺、ここんとこ疲れてるし、酔っぱらって何を言うかわかんねぇ、怖ぇ……。
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