「そろそろ俺、失礼します」
「送っていくよ、ちょっと待ってて」
宇都宮はキッチンを出ると自分の寝室に向かった。
白いダンガリーのシャツをTシャツの上に羽織って出てきたところで、宇都宮はひとみに出くわした。
「おや、もう起きたんだ?」
「おはよう」
何やらひとみの目に険しいものを感じて、「どうしたの?」と宇都宮は尋ねる。
「トイレに行く時、聞こえちゃったんだけど………」
「え?」
「あなた、何、考えてるの?」
「何って、何のこと?」
「すっとぼけて」
ひとみは睨み付けた。
「トシちゃんがやな人間じゃないことは知ってるけど、面白半分で人の感情かきまわしたりしないでよね」
すると宇都宮は目を見開いて、くすりと笑ってひとみの横を通り抜けた。
「ゆっくりしてて。良太ちゃん送ってくるから。冷蔵庫にあるもの勝手に食べていいからね」
宇都宮はまめな男である。
それは長年の付き合いからひとみも知っている。
現に、昨夜みんなが死屍累々となっている中、鍋やらグラスやら後片付けをしたのは宇都宮しかいない。
それに決して悪い男ではない。
「だけどね」
ひとみは腕組みをして宇都宮と良太を見送った。
「それに絶対、良太ちゃんなんか変だわよ」
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