しばらく猫を撫でてやり、カリカリを二つの器に分け与えると、猫たちははぐはぐと懸命に食べ始める。
こうやって食べているを見てるのが一番和むよな。
猫のお世話を一通りすませると、良太はパパっと服を脱いで、シャワーを浴びた。
「ちぇ、なーにが、プライベートに口をはさむつもりはないだよっ!」
湯を顔に浴びながら、良太は喚いた。
頭の中で工藤の言葉がリフレインしている。
どうせ、俺が朝帰りしようが何しようが、工藤には関係ないんだろうさっ!
クソッ!
良太はやけくそのように頭をガシガシとシャワーで洗い、コックを止めると、はあ、と大きく息をついた。
今日は名古屋だっけか、工藤。
一応、大体の工藤のスケジュールも把握しているつもりだが、最近はイレギュラーな行動が多いような気がする。
当分工藤の顔も見ることもない、か。
何だかそれはそれでむしろ今はありがたいような気がした。
工藤と本谷のことを考えると、神経が高ぶって思考が乱れて、仕事が手につかなくなる。
考えたくなくても、時々頭をよぎってしまう。
本当にもう、この部屋を出て行った方がいいのかもしれない。
猫たちのことを考えると、良太がいない時に、鈴木さんにちょっと見てもらえる環境というのはありがたいのだが、そうなったらそうなったで、ペットシッターとかいろいろ方法はあるだろうし。
工藤の恩情の上に成り立っている、ほぼただのような家賃も、鈴木さんに猫を頼めばいいなんてのも、随分周りに頼り切った環境に甘んじていたのだ。
「ちぇ、仕事に差しさわりなんかあるもんか!」
鈴木さんに、朝帰り、なんて顔見せないようにしないと。
ビシッと行くぞ、ビシッと。
「あら、良太ちゃん、おはようございます。今日は早いのね」
十時十分前だ。
「おはようございます。コーヒーはいってますよ」
「あらあ、どうしたの? 今日は随分張り切っちゃって」
「いえ、ちょっと、心を入れ替えようと思って」
フフフと笑って、鈴木さんはコーヒーを持ってデスクに向かう。
「そういえば、昨日、良太ちゃんが出かけたあと、工藤さんが帰って見えたのよ。また今日は名古屋だっておっしゃってたけど」
「あ、そう、ですか」
「良太ちゃんはって聞かれたから、宇都宮さんとお約束でお出かけみたいって」
「え………?」
工藤、知ってたんだ。
「初めてお目にかかったけど、ほんと、宇都宮さんって素敵な方よね~」
女子高生のようにウキウキしている鈴木さんを見ながら、良太はまた心が急降下していくのを感じていた。
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