「は?」
「何かあった?」
「え、いや……」
「長い付き合いだろ、そんくらいわかるって。お前さん、すぐ顔に出ちまうからな」
「……いや、ほんと、仕事、目いっぱいぎちぎちで、疲労困憊で」
「それだけじゃねぇだろ? まあ、無理に言わなくてもいいが、口に出しちまった方が、楽になるってこともあらぁな」
下柳がそこまで言うほど、わかりやすかったのか、と良太は改めて思う。
仕事はきっちり没頭するくらいだったものの、仕事を離れると頭の中でいろいろああでもないこうでもないとなるので、仕事をしていた方がむしろ精神的にはよかったのだ。
「……いや………、ただ、その、俺もアラサーだし、そろそろちゃんとしないとって考えてただけで」
ホッケの一夜干しをつつきながら、良太はぼそぼそと口にした。
「ちゃんとって、十分ちゃんとしてるだろ」
「全然……ちゃんとなんて……、そりゃ、あれやれこれやれって言われて、パシリみたくやってますけど、別にそれに文句はないですけど、俺、何にも、いっちょ前にできるものなんてないんですよ。ヤギさんとこの制作現場でも、モニター一つ動かせるわけじゃなし、たまに、ちょっと口出させてもらうくらいで、ドラマの撮影現場顔出して、差し入れ持ってくくらいで、監督や俳優さんとちょこっと話して、でなきゃ監督と脚本家さんのいがみ合いの仲裁? でなきゃ、竹野さんみたいな難しい女優さんのああだこうだを聞いてなだめるくらい……」
話始めたらそこまで一気に吐き出していた。
「前に、CMとか、ドラマとかちょこっと出させてもらったことがあったけど、てんでものにならなくて、ダメ出しされただけで、結局、俺って何一つまともにできない。俳優さんたちもそうだし、佐々木さんやもちろんヤギさんだって、すごいプロ、じゃないですか。俺なんか、会社入ってもう何年にもなるのに、何もできなくて、このままじゃ………。俺…何やってんのかな、ってこの頃……」
そこまで言うと、良太は下を向いて口を噤む。
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