素面で口にすると、かなり現実味を帯びてきて、本当に足元から崩れそうな気がしてくる。
「あのなあ、ちょっと、それ、悩むとこが違わねぇ?」
「え? 何が、ですか?」
良太は顔を上げて下柳を見た。
「誰もお前さんに、制作のプロになれとかさ、クリエイターになれとかさ、んなこと言ってねぇだろ?」
「や、だから、そんなんできないって話で……」
「スポンサーに頭下げて、スケジュール決めて、スタッフ依頼して、ロケの宿決めて、足を確保して、監督やらADやら、脚本家やらのああだこうだをまとめて、俳優の文句を聞いてやって収めて、良太ちゃんがいなきゃ、ナーンも進まないしできないし終わらないんだぞ? それが良太ちゃんの仕事だろうが。今更何を言ってるんだか」
下柳の言葉に、良太は一瞬思考を停止した。
何、結局、俺は使いっパシリってことなわけか。
良太は下柳の言葉を反芻して自嘲する。
「あのさ、お前さん、工藤の後を追うって前言ってなかったか?」
「え、あんなの、大きなこと言って、俺ごときが、何を身の程知らずなって、工藤さんにせせら笑われたくらいが関の山で」
良太はへらっと笑って、またホッケをつつく。
「それこそ、大抵のヤツなら聞けば震え上がるような鬼と言われた程の工藤の罵詈雑言だって、へとも思っちゃいないのが良太ちゃんじゃなかったっけ?」
「またまた、そんな恐れ多いこと言わないでくださいよ」
確かに怒鳴られたってクソミソに言われたってクソと思うくらいで、下手すれば言い返したりするのが良太だが。
しかし中にはぐさっとくるものがあるのをいじいじ我慢していることだって色々あるのだ。
「ま、とにかくさ、プロデューサーって仕事は、そーゆう雑多なことをやりながら、ことが円滑に進んで仕上がるように仕向けて行くってこったろ?」
「え?」
「だからさ、オーケストラはコンダクターいねぇと音楽になんねぇだろ? それとおんなじで、プロデューサーっつうコンダクターがいてまとめて仕上げねぇと、ドラマも何もできねぇってことさ」
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