風そよぐ86

back  next  top  Novels


 プロデューサーって………
 俺のやってることは、そんな大それたものじゃない。
「俺はそんな、プロデューサーなんて言われるようなこと何もしてませんよ。工藤が聞いたら鼻で笑われますって。今の仕事だって、会社が万年人手不足で、工藤が手が回らないところを俺に丸投げしてるだけで。大体、あの人、工藤さん、自分が苦手なこととか、大抵俺に丸投げして、自分はやりたいように動いているんですよ」
「何、それが、今の良太ちゃんの不満ってわけ?」
 下柳がくすりと笑う。
「不満なんて言えるような立場じゃないですよ。言われたらきっちりやりますし」
「お前さん、自己評価が低過ぎねぇ? どしちゃったの?」
「いや、会社入ってもう五年になりますし、考えなくちゃいけない時にきてると思うだけです。実際、工藤さんの恩情でここまでやってこれたってのは事実ですから」
 ふーん、と下柳は自分のお猪口に徳利を傾けた。
「やっぱ、なんか、工藤に負い目感じたりしてるわけか」
「負い目っていうか、肩代わりしてもらってる負債もですけど、部屋もほぼタダみたいなもんだし、それでいいわけないって思って」
「だって、月々返済してんだろ? 負債ってのもさ、だったら何の問題もないんじゃね? 部屋なんかどうせ空いてたんだし、お前さんが気に病むことなんざ何もねぇ。堂々と仕事してりゃいんじゃね?」
 確かに、下柳の言う通りかも知れない。
 だけどな。
「なに、ひとみのやつがさ、良太ちゃんが最近変だってさ、どうも仕事に満足してないとか、引っ越しそうかとか言い出したって、えらく気にしててさ」
 なんだ、ひとみさんから聞いてたんだ。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
いつもありがとうございます