良太はそんな風に自分のことをきにかけてくれる人たちがいることを、有難いと思った。
「すみません、俺なんか、心配させちゃったみたいで。でも大丈夫です。ちゃんと自分で考えますから」
ちゃんと自分で考えなくては。
良太は心の中で自分に言い聞かせると、この店特製の塩辛をつついている下柳のお猪口に酒を注いだ。
良太が京都につくと、空はきれいに晴れあがっていた。
梅雨の合間の晴天は、鬱々として下を向きがちな気分を上昇させてくれる。
「お疲れ様です~」
京都の町屋をリノベーションしたカフェを借りて、『からくれないに』の撮影が行われている。
京都は景観条例に基づいて、コンビニなども元々あった町屋や長屋を利用して営業していたりする。
宅配会社までもが古い軒並みに暖簾をかけたりして、今にも荷物をかついだ飛脚が飛び出してきそうなたたずまいだ。
「待ってたよ、良太ちゃん」
ちょうど休憩時間らしく、気さくに声をかけてくれるのは、このドラマのシリーズでずっと監督をやっている山根だ。
脚本も前回と同じ久保田で、監督とは懇意の間柄だから、こちらも良太とは顔なじみだ。
「『巴鮨』のおいなりさん、早速お昼みんな楽しみにしてるよ」
今日届けてもらうように数日前に頼んでおいたのだが、『巴鮨』はもう随分前に工藤から教えられた店で、京都で撮影などがある時は、一度はその店を利用することにしている。
「しかし、何か、良太ちゃん、やつれてない?」
ここでもか、と思う良太だが、確かに頬がこけたような気がしないでもない。
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