「別に、あたしの部屋でいいわよ。話があるの。ホテル、同じよね?」
いつも使っているホテルで、秋山と良太は同じ階のツインのはずだ。
「はあ」
「ご飯、おごったげるから。ルームサービスにすれば、スーツなんか着なくても平気でしょ」
「はあ。何かまた、面倒ごとですか?」
眉をひそめながら聞くと、「まあ、そうともいうかなあ」と何やらもったいぶった言い方だ。
「わかりました。何時に伺えばいいですか?」
「そうね、七時頃?」
「了解です。俺、昼食べたら、高雄へ顔出してくるんですけど、そう遅くはならないと思います」
するとアスカは良太の顔をじっとみつめてから、あっそ、と言った。
「奈々ちゃんもこっちいるのに、全然会えてない」
「向こうはずっと高雄のホテルですからね」
「良太も来たし、うちの会社ほぼこっちだし、どうせなら明日とか飲み会でもやんない?」
アスカの提案に、良太ははあ、と脱力感に襲われる。
「無理ですよ、急にそんなの。向こうのスケジュールもありますし」
「たまにはいいと思うんだけどなあ」
「とにかく、七時には伺いますから」
ふう、と思わず声に出てしまいそうになって、良太は慌てて口を噤んだ。
お気楽でいいよな、アスカさんは。
弁当、俺の分も足りてるよな。
早いとこ腹ごしらえをして、高雄に向かわなくては。
この際、気が進まないことは早めに済ませてしまおう。
工藤の顔をあまり見たくないという状況がくるとは、良太も夢にも思っていなかった。
宇都宮に送ってもらった朝、顔を合わせて以来、一度、京都に行く前に、業務連絡で工藤に電話をしたが、今日顔を出しますと告げると、わかった、という返事だけで切れた。
気が重い。
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