カットの声がかかると、アスカはあたりを見回した。
「秋山さん、良太、もう行っちゃったの?」
「あれ、そのようだね、高雄まで車で一時間くらいか」
「そっか。ま、いいけど……」
午後になると、晴れていた空は少し曇りがちになっていた。
「明日も早朝ロケですから、今夜はあまり遅くならないようにしてください」
「わかってるわよ」
アスカは一応そうは言ったものの、今夜良太を部屋に呼んでいることは言っていなかった。
「明日は午後から雨の予報ですが、朝は何とかもってくれればいいんですが」
「流は今夜こっちに来るの?」
空の心配をしている秋山に、アスカは思いついたことを口にする。
「そのようです。彼のスケジュールはかなりタイトのようですよ」
「流も忙しいのに、よく受けたよね、この仕事。そういえば、本谷のマネージャ、今回もついてこないわけ?」
「まあ、もうおひとり担当されているのが、少々難しい女優さんですからね。本谷くんがしっかりしているので、ってことでしょう」
「にしても、ちょっと放りっぱなし過ぎだと思わない?」
「工藤さんもそれを少し気にかけてるみたいですよ」
アスカはタブレットを覗き込んでいる秋山を振り返った。
「工藤さんが?」
「ええ」
「何か、珍しくない? 工藤さんがよその俳優のことを気にかけるとか」
「そうですか?」
秋山はたいして興味もなさそうに言った。
「ねえ、良太ちゃん、もう行っちゃったの?」
同じことを後ろから来たひとみが聞いた。
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