風そよぐ93

back  next  top  Novels


「そうみたい。ねえ、ひとみさん、ちょっと」
 アスカはひとみを連れて奥の方に移動した。
「秋山さんがさ、工藤さんが、やっぱり本谷のことを気にかけてたって」
「あらま」
「うーん、絶対それって、らしくなくない?」
「まあ、そうね」
 二人はしばし口を噤んだ。
「ま、とにかく、今夜よ。あたしは高雄に行ってくるわ」
 ひとみが言った。
「あたしは良太を待つわ。でも結構、良太もそうおいそれと本音は吐かないのよね~」
「でも夕べ、良太ちゃんの最近の言動とかの理由がようやくわかったわ」
 ひとみはうん、と頷いた。
「まさかよね~、あの、本谷が」
 昨夜のことをまた思い出して、アスカは感慨深げに言った。
 昨日、夕方五時頃のことだった。
 撮影中にふらりと高雄から工藤がやってきて顔を覗かせた。
 そのシーンには出番がなく、秋山の横でおとなしく撮影を見ていたアスカだが、工藤に気づいて秋山の腕をつついた。
「工藤さん、いらしてたんですか」
 秋山はこそっと工藤に近づいて声をかけた。
「ああ。どうだ? 撮影は」
「順調ですよ」
「本谷はどうだ?」
「まあ、上々というところじゃないですか? 彼にしては。多少科白が難ありでも、表情とか動きが『田園』の時より俄然よくなってます」
「そうか」

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
いつもありがとうございます