しばらく腕組みをして工藤は撮影をじっと見つめていた。
「ねえ、工藤さん、何だかうらぶれてない? かなりお疲れみたい」
アスカは秋山に近づいてこそっと言った。
「そうだな。良太もこっちに来れるのが明日だし、こっちはこっちで今までにない連ドラってことで、気にはなるんだろう」
「結構無茶ぶりよねぇ」
「まあ、局側も工藤さんだからできるとふんでGOサインを出したんだろう」
頷いて秋山も眉をひそめた。
「工藤さんも、引き受けちゃうから」
「絶対無理だとわかっているもの以外、受けるからな。局側もそういうところを頼みにしているところがあるし」
二人がこそこそとそんなことを話しているうちに、カットの声がした。
「工藤さん!」
アスカがその声に顔を上げると、本谷がいそいそと工藤に駆け寄るのが見えた。
工藤と本谷は何か話しているのだが、本谷が満面の笑みを浮かべているのにアスカは気づいた。
何よあれ?
オヤジ工藤に喜んで尻尾を振るのなんて、良太だけかと思ったら。
その時は何となくそんなことを思っただけだったのだが。
二人が何を話しているかはもっと近づかないと聞こえないし、何となく近づきづらい雰囲気があった。
その様子を見ていたのは、アスカだけではなかった。
向こう側にいるひとみも工藤と本谷の様子をうかがっていた。
それから、工藤は山根や久保田と一言二言話をすると、また高雄に戻っていった。
ロケ現場を離れる工藤の後ろ姿を本谷がしばらく見つめているのを、アスカもひとみも見逃さなかった。
それだけなら憶測だけどね、くらいで済んだかもしれない。
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