その頃、良太はタクシーで高雄へ向かっていた。
しばらく走り、中川トンネルを抜けたあたりでロケが行われているはずだった。
北山地方は古くから林業を生業として受け継がれ、夏でもひんやりとした空間と清滝川など谷を流れる水といい、杉を育てるのに適しており、北山杉は室町時代の頃よりは茶の湯の文化とともに茶室などの数寄屋建築にも用いられたとされる。
また神護寺、西明寺、高山寺、それに平岡八幡宮など、神社仏閣は国宝級だ。
北山地方や北山杉についてはもっと調べたかったものの、結局時間がなく、新幹線の中でネットの知識を拝借した程度だ。
京都の中心部から約一時間ほど、北山杉の里は閑として良太の知る世界とはまるで異質の空間がそこにあった。
仕事とはいえ、こういうところに巷の人間が大挙して訪れること自体、空気を汚しているような思いがする。
「あ、良太ちゃんだ!」
既に大学生でもあるのだが、未だに無邪気さが残る南沢奈々は、『大いなる旅人』シリーズでは天真爛漫な女子というそのままの笑顔でタクシーから降りた良太を見つけて大きく手を振った。
今日は間がいいらしく、こちらも休憩時間のようで、谷川や志村も奈々の声に振り返るのが見えた。
「何かすっごい久しぶりな気がする」
「うーん、三週間ぶりくらい?」
「ねえ、何か良太ちゃん、お仕事きつすぎない? 頬がこけちゃってるよ?」
いきなり指摘されて良太は苦笑した。
「まあ、蒸し暑くなってきたしね~。でもやっぱ、こっちは涼しいね。上着着ててもひんやりする」
「そうなのよ。暑いの苦手だから、助かるんだけどね」
そんな言葉を交わしながら志村たちのところまで行くと、「何か、疲労困憊って感じだな」と志村にまで言われた。
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