Summer Break2

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 猫たちは平造が用意してくれた小部屋に猫ベッドやトイレ、キャットタワー、給水器や食器などを設置して、とにかくなるべくストレスの無いようにと良太は心配している。
「本宮さんとか、呼ばなくてよかったのか?」
 猫を遊ばせている妹の亜弓に、ついそんなことを聞いた良太に、「だから、まだそういう段階じゃないってば」と亜弓は言い返した。
 杉田さん夫妻や鈴木さん親子、アスカの祖父幾馬、小笠原の母ゆかりはラグジュアリーなホテルを取り、奈々のマネージャー谷川の娘夫婦や井上と小野万里子夫妻、南澤家、万里子のマネージャー菊池、小杉一家はコテージ組だ。
 俳優陣や秋山、谷川、真中、森村にはそれぞれホテルを取ったが、平造は親睦会の準備があるからとホテルは固辞した。
 ディナーは顔見知りのイタリアンレストラン、カンパネッラのオーナーシェフ吉川とスタッフに出張してもらい、杉田さん、鈴木さんにはバースデーケーキも振舞われた。
 もちろん、みんなからのプレゼントも山と積まれていた。
 スピーチをしてもらったのだが二人とも涙ぐんで、拍手に包まれた。
 加えて吉川の店でたまにピアノを弾いているピアニスト峰岸徳人にジャズからクラシックまでをオリジナルアレンジで演奏してもらえたのはラッキーなサプライズだった。
 峰岸は一年のほとんどを海外で演奏旅行をしているらしく、お盆のこの頃だけ実家に戻ってきていたため、吉川が頼んでくれたのだ。
「いつもながら、大変だねえ」
 リビングの隅のテーブルに陣取って、タブレットで、ホテルやコテージの利用者リストを見ていた良太に、秋山が背後から声をかけた。
「ええまあ、仕事で慣れてますから」
 そうはいっても、各々の意見を取り入れて予約が必要なところはあらかじめ予約したりタクシーを手配したりというオプショナルサービスがなかなか骨が折れる仕事だった。
 森村も手伝ってくれたので、今のところスムーズに進行している。
 ただ、この軽井沢のイベントは青山プロダクションの親睦会だけで済まないことが、良太の肩にどっと重石のように乗っかっていた。
 前にも招待されて良太まで工藤と一緒に出向いたのだが、青山プロダクションにとっては重要なスポンサーである東洋グループ会長綾小路大長の別荘で、毎年開かれている大々的なパーティが、今年はお盆明けの十七日に開催されるという。
 前回は何も用意してこなかったために、良太はこちらにきてからスーツなどを調達する羽目になったのを教訓として、今回はきっちりそれなりのスーツを持参していた。
 ともあれ親睦会は終わっても、滞在する社員やその家族のために別荘のリビングで、テニスコートやサイクリング用のレンタル自転車の手配、美術館や各施設やカフェ、レストランへの観光案内など、良太は各々の要望に応えるべく、タブレットで検索したり施設に電話したりと彼らが出かけていくまで大忙しだ。
「よう、観光案内所はもう閉めたのか」
 十一時過ぎた頃、ぐったりとソファに凭れている良太を嘱託カメラマンの井上がやってきてからかった。

 


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