月鏡38

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 千雪のからかいをしっかり訂正して、良太は加藤とともに上の階に上がった。
 機材を持って順番にフロアを上がり、加藤と一緒に調べてはみたが、オフィスに仕掛けられたもの以外には見当たらないようだった。
「次は車か」
 加藤は文句ひとつ言わずに黙々と仕事をこなしている。
 無論、調査費用は出すつもりだが、こんなに熱心にやってもらえると良太も非常に有難かった。
 何かの時にはまた、お願いしてみよう。
「あと一応、警備員室とかもお願いしますけど、とりあえず腹ごしらえしてください」
「そういえば腹が減ったな」
 いつの間にか八時を過ぎていた。
 オフィスに戻ると、千雪が手持無沙汰でテレビをつけながら待っていた。
「キッチンからグラスとか借りてきたで」
「ありがとうございます。すみません、遅くなって。どうぞ召し上がってください」
 工藤も電話で呼ぶとすぐに降りてきた。
「お先、いただいてます」
 工藤の顔を見ると千雪が言った。
「お前は何をしてるんだ?」
 ソファに座りしな、工藤はからかい半分尋ねた。
「俺は、ほら、オフィスのお留守番?」
大テーブルに置いた大きな鮨の器から遠慮なく鮨を取って食べながら、千雪は悪びれもせずに答えた。
珍しく工藤もちゃんと箸をつけている。
「まあ、工藤さんも、どうぞ一杯」
 千雪はノンアルビールの缶を傾けて工藤のグラスに注ぐ。
「お前、相当ヒマらしいな」
「暇も作らんと、やって行かれへんし」
 工藤は鼻で笑う。
「それで、盗聴器は他にあったのか?」
 工藤は加藤に向かって尋ねた。
「いいえ、今のところオフィスに仕掛けられていたヤツ一つだけです。あとは、車のGPSとか、ネットや携帯関連調べれば」
「そうか、よろしく頼む」

 


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