「自分で言うかな。千雪さんの単位取るためにテストで徹夜した次の日、野球の試合で、沢村にホームラン打たれたのを思い出しましたよ」
「テストのせいにしたらあかんやろ」
良太ははあ、と一つ息を吐いて、「アメリカ留学するって、やっぱ日本は遠いって感じです?」と聞いた。
「なんやそれ。まあ、そら、遠いわな」
「京助さんと一緒に留学したのは、偶然ですか?」
それを聞くと千雪はややあって、「いや、表向きは偶然みたいになっとるけど、ちゃうんや。あの頃、ほんまに最悪で、小説も書けんようになってしもて、もともと留学を打診されてた京助が宮島教授にかけあって俺を同じ大学の法学部にぶちこんだんや」と千雪にしては素直に打ち明けた。
「ぶちこんだ、って、まあ、京助さんのことだから、千雪さんがどういう状況でも連れてっただろうことは容易に想像できますけど」
そうだよな、あの京助なら、否が応でも千雪さんのこと連れてったよな。
けどなあ、佐々木さんはそういうわけにはいかないだろうなあ、否が応でもなんて。
「ほんで、誰が留学すんの?」
「え……………」
まともに千雪に睨まれて良太は言葉に詰まる。
「何を隠しとるんか知らんけど、とっとと吐けや。ここまで来て。どうしても俺が信用でけんいうんなら、今すぐとっとと出てったら?」
「千雪さーん!」
良太は情けない声を上げた。
そこまで言われたらもう覚悟を決めるしかないだろう。
「実は沢村のやつが…………」
言いかけると良太はもうあとは堰を切ったように話し始めた。
沢村がレッドイーグルスの監督からMLBに来るように打診されていること、行ったら最低でも二年はいてくれと言われていること、佐々木にはそれをまだ言えないでいること、佐々木に言ったらおそらく付き合いを解消されると思っていること、言わないでMLB行きをやめたことがわかっても佐々木は怒って付き合いを解消するに違いないだろうと思っていること、などを話した。
良太がそこまで一気に話し終えると、千雪はちょっと小首を傾げて、「何で沢村がMLB行ったら、付き合い解消?」と聞いた。
「それはやっぱ、互いの思いの強さ、とか? あと、佐々木さん、バツイチで、奥さんに置いてかれてるから、沢村のことどこか信じきれてないんじゃないかって、沢村は思ってるみたいで」
佐々木が売ろうとした土地を沢村が勝手に買ったことも佐々木が怒ったし、できれば建物を建てたいという沢村の希望も、ようやくOKがでたばかりだと、良太は言った。
「家、建てるん? 佐々木さんちの隣に? うーんまあそれは、佐々木さんが躊躇するんはわからんでもないけど、でも仮にいつか沢村とダメになっても、沢村が家売ったらええだけやろ?」
さらっとそんなことを言う千雪に、良太は脱力した。
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