「軽く、ダメになったらとか言わないでくださいよお。一応、沢村、佐々木さんに命かけてますってやつなんで」
「だったら、もう京助やないけど、佐々木さんのことかっさらってとっととMLB行ったらええやん」
ああ、やっぱり千雪に話したところで、そうそううまい知恵などないわけだ、と良太は内心がっくりする。
「そんなことができれば、沢村も俺なんかに話したりしませんて。それに大きな問題はお母さんです。お母さん一人置いて行くとか、佐々木さんが、うん、て言うとは思えないし」
「あの、怖そうなおばはんやろ? 二年くらい佐々木さんおらんかて、平気やろ」
「おばはん、て、そんな無責任な」
「案外、母親離れしてないんは佐々木さんの方かも知れんで?」
「佐々木さんは心配なんですよ、一人じゃ何もできない人らしいし」
「お手伝いさんいてるんちゃうの?」
「通いの家政婦さんですよ。まあ、お茶のお弟子さんらも出入りしますけど」
「お母さんのことは、通いやのうて住み込みにしてもらうとか、いざとなったらどうにでもなると思うで?」
「はあ」
千雪のいうように、佐々木は母親を理由にしているところが無きにしも非ずだと思わないでもなかった。
「とにかく俺としてはMLBに来てくれとか言われるなんて、悔しいって思いもあるし、せっかくそんなチャンスをもらってるのに、佐々木さんと天秤にかけてムザムザ断るとか冗談じゃないって思うし、可能性があるんだったらMLBで活躍してもらいたいですよ」
自分には夢のまた夢で終わった、いや、まだ一パーセントくらいはしつこく希望を捨ててはいない良太にとっては、本当に冗談じゃない話なのだ。
しばし良太は唇を噛む。
昔から、よく頑張りました、はたくさんもらったけど、よくできました、ってのはほぼ縁がなかったもんな。
沢村と比べたって何の意味もないことはよくわかっている。
それより大学まで文句も言わず好きな野球三昧させてくれた親には本当に感謝しているのだ。
「沢村としては佐々木さんちの横に自分のうち建ててもうて、外堀から埋める作戦で佐々木さんとうまくいきたい思うとったとこへ、予期せぬ出来事やったわけやな」
「まあ、そういうことです」
「二年か。まあ人によってはそんな長い時間離れとるとかやってられへんから、誰ぞ近くの人に乗り換えよ、思う時間かも知れへんな」
「ええ、千雪さん~! またそんな絶望的なことを」
「せえけど、実際はそんなもんやろ」
冷たく言い切られて良太はまた、はあ、と息を吐く。
「思うようにいきませんよね、なかなか」
何だか良太までが絶望感に押しつぶされそうになる。
「要はまあ、佐々木さんが向こうに行かざるを得ない何かがあればええ、いうことやな」
良太は顔を上げた。
「え?」
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