「楠木はいくつだ?」
工藤は君塚に聞いた。
「ああ、確か、二十八? 若手といってもアラサーだし、ちょっと焦ってるのかも知れない。事務所に所属して十年目だって言ってたし」
「そうか」
このドラマでは若手だし、見た目が年齢より若く見えるのでどこでもそういう扱いを受けているのだろうが、俳優でやっていこうというのなら、いつまでもチンピラヤクザのような役だけでなく、そろそろマシな役でもなければこの先食っていけない。
全て年齢で決まるわけではないし、ブレイクが遅い俳優はいくらもいるが、楠木の場合、役に向かう姿勢を少しでも変えない限り、今後マシな役をもらうのも難しいだろうと思われた。
先頃、エキストラばかりを命がけでやっている無名の男の映画があったが、確かにあの手の役者は掃いて捨てるほどいる。
ただし主演俳優は名の知れた演技派だ。
二十八か。
良太と同い年か。
確かにこの年齢はいろいろと物事がわかってきて、岐路に立つような歳なのかも知れない。
しかしなんだ? また千雪のところになんぞ。
あのやろう、そういえば一昨日か? なんかきょどってたな。
今度は何を背負いこんでるんだ?
工藤は胡散臭げな良太の顔を思い浮かべる。
撮影は明日の午後までだが、ネットプライムの件が入ったので一足先に戻ることにした工藤は、こっちを午後イチに出れば三時には東京に着くだろうと換算する。
「終わったら聞き出してやる」
つい口に出していたのを君塚が聞きつけた。
「やだ、誰から聞き出すんですか?」
「あ? いや。それより、楠木、ちょっと気にかけてやれ。芽が出そうで出ない。どこかで突き破らないとこのままだぞ。まあ、それも悪いとは言わないが」
それを聞くと、君塚は大きく頷いた。
「やっぱ工藤さん、見るとこは見てるんだね。あいつ、ちっともわかってないんだから」
同じ事務所の俳優陣と笑い合っている楠木に目をやって、君塚は肩を竦めた。
直接ネットプライムの東京オフィスが入っている赤坂のツインタワービルのロビーで工藤と待ち合わせていた良太は、工藤を待つ間、資料を読み込んで、わからない単語などはきっちり調べたつもりだが、念を入れて再度チェックをしていた。
ミーティングは英語だが、日本だけでなく香港やシンガポール、韓国からの参加者のために、同時通訳で英語以外の言葉を選んでヘッドフォンで聞けるようにはなっている。
大概普通に英語をあやつる者ばかりで、話せないのは日本人くらいのものだ。
実際の英語でないとニュアンス的に捉えきれなかったりするのが気になって、良太はヘッドフォンなしで臨んでいる。
そして英語をしゃべっている工藤を見ると、本社の人間にはかなりハイレベルなエグゼクティブとして扱われているのがわかる。
そんな工藤がカッコイイとか思っちまう俺って、やっぱ頭腐ってるわ。
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