アスカさんに知れたら、オヤジがいいなんて良太くらいよ、とかまた言われそうだけど。
でも、だって、俺だけじゃない、本谷だって、工藤にさ………。
本谷のことを思い出すと、何だか自分の思いと重なるものがあってじわる。
最近会うこともないが、この夏、本谷はドラマのメイン役で気を吐いていた。
雑誌にも取り上げられていたが、人気に実力がついてきた感じだ。
ほんと、ひとみさん予想あたって、化けたよな。
俺も負けてらんないな。
意見を求められて良太も発言したが、工藤の部下として恥じないようにと目一杯気を張ったため、終わるとかなり疲労困憊だった。
日本勢は他にも何人かいたが、英語がしゃべれなくて四苦八苦のようだ。
案外、入社早々工藤に英会話塾に放り込まれて、ビジネス英語を叩きこまれたことが、今になって功を奏しているのかも、などと良太はあらためて思う。
「森村は最近どうだ?」
工藤は熱燗を手にぐい飲みに酒を注いだ。
工藤と良太は夕方オフィスに一旦オフィスに戻ると、行きつけの小料理屋『夕顔』に向かった。
「よくやってます。飲み込みもいいし、人当たりもいいし、あちこちで重宝がられてます」
「次の、大いなる、が来年秋の放映がきまった。撮影は春あたりになる」
「あ、じゃあ、モリー、前よりぐんと視界が広がったから、日比野監督も喜ぶんじゃないですか?」
良太は銀鱈の味噌焼きを解しながら言った。
「脚本は浅沼が珍しく早く上げたから、キャスティング、リストアップしておけよ」
「はい、わかりました」
いつもの定位置でそんな話をしていたところへ、工藤の携帯が鳴った。
「あ、なんだ、君塚か。撮影終わったのか?」
君塚という名前に、良太はつい耳をそばだてた。
先日、工藤を訪ねてきた、MBCの女性のプロデューサーだ。
「ああ? 今、飲んでるんだ、え? 広瀬とだ。あ? 乃木坂の『夕顔』だ」
そう話すと工藤は電話を切ったが、「これからこっちに来るらしい。紺野さんと君塚だ」と言う。
「あ、そうですか」
君塚だけでなかったことに、少しほっとした良太だが、いずれにせよ工藤と二人の時間を邪魔されることに変わりはない。
つまんねーの。
心の中でぼやきながら良太はぐい飲みを口に持って行く。
「二人か三人、いいか?」
工藤が確認すると、「お座敷にします?」と女将が聞いた。
「そうだな」
「三人って、誰かほかに来るんですか?」
「ああ、一人、出来の悪い下っ端俳優がたまたま一緒の新幹線だったらしい」
良太が聞くと、工藤は苦笑した。
ちょうど楠木とホームで出くわしたから、首根っこ捕まえて一緒に連れていくと君塚が威勢よく話していた。
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