「先生にもお伺いを立てたらね、週一回は必ず、佐々木ちゃんと一緒にお稽古すること、お稽古の状況を月一回は必ず報告することって」
「それでお許しが出たの?」
楽し気に報告する直子に、良太はちょっと恐る恐る尋ねた。
「もちろん。あ、それでね、そのあと沢村っち、佐々木ちゃんと一緒に、先生に挨拶にきたのよ」
「うそ! それで?」
「佐々木ちゃんと私の住まいは用意できるし、セキュリティの確かなところだし、二人のことは必ず守りますって宣誓してったみたい」
「あいつ、やる時はやるんだな」
良太は妙に感心してしまった。
「大事なお嬢様をお預かりするのです、周平、心してかかりなさいって、先生言ったって」
それを聞くと、やはり年寄りなどと侮れないと、工藤の言葉がまたしても良太の身に染みた。
佐々木は直子の両親にも挨拶に行き、責任をもって預かることを報告したのだが、古巣であるジャストエージェンシーの社長春日も一緒について行き、九十度のお辞儀をしたのだと、直子はケラケラ笑っていた。
「でも、問題は英語! 四月までに日常英語くらいしゃべれるようにならないと。あたしはさ、スクールに通うのでもいいけど、佐々木ちゃんはそんな暇ないじゃない? だから出張してくれる英会話の家庭教師、探してるんだけどさ」
いつにもまして慌ただしい直子のようすに、良太は微笑ましくも「がんばって」と励ました。
直子はぱっと見と中身は打って変わって、真面目に取り組む方だから、何とかなるだろうと良太は思う。
「そうなんですよ、うちもてんわわんやで」
とこぼしたのは代理店プラグインの西口浩輔だ。
出先から打ち合わせのために青山のプラグインに立ち寄った良太が、藤堂、佐々木と大まかな打ち合わせをした後、人気のパティスリーのシュークリームと藤堂の入れてくれた美味しい紅茶を堪能している時に、浩輔が大きくため息をついた。
「だって、うちは構成員四人なんですよ? そのうち会社のブレインである藤堂さんが、ニューヨーク行くってことになると、残る三人で仕事を回していかなくちゃなんですよ」
いつも忙しく動いている河崎と三浦は外出中だ。
プラグインは元英報堂エリート営業マン四名で構成されているのだが、西口浩輔は河崎の部下ではあったが、紆余曲折があり、ジャストエージェンシー在籍中は佐々木の部下として肩書はデザイナーだった。
現在は主にデザイナーとして動いているのだが、営業的な要素も徐々に増えている。
「うちは自分の案件は自分でがモットーなんですけど、藤堂さんがいない間、俺が受け持つ案件がまた増える見通しで、はあ」
情けなさげに言う浩輔に、「まあまあ。浩輔ちゃんならできるよ。何しろ、河崎の一番弟子だったんだから」などと藤堂は言う。
「それって、プレッシャー以外の何物でもないですよ」
恨めし気に浩輔が藤堂を見やる。
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