月澄む空に14

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「なるほど、小宮山さんに目をつけたのは、やっぱギャンブルの噂だよね」
 藤堂が言った。
「はい、そのせいで奥さんとは離婚調停中だっていうことで、もちろん、小宮山さんにそんなことをする動機があるのかどうかもわかりませんけど」
「動機って、やっぱカネ? しかなくない?」
 藤堂はおちゃめな表情で肩を竦める。
「はあ」
「ギャンブル依存症の容疑者Kは、あちこちから借金して、ヤバイところからは脅されて、しかも妻とは離婚訴訟中で不利なことはわかっていて慰謝料が必要なことは当然わかっている。首を吊るか犯罪に走るかの二択って時に、『検事六条渉』のドラマで妨害工作してくれたらおカネやってもいい、とか黒幕のXに言われて、容疑者Kはライトを落っことしてみたけど、誰も怪我もしないし、事故ってことになっちゃったから、今度は何をしようかと思案に暮れている、と」
 とうとうと捲し立てる藤堂を思わず見つめていた良太は、はっと我に返る。
「何か見てきたような筋書きですね」
「良太ちゃん、サスペンスドラマやってるくせに、その程度のことは考えるでしょ?」
「ドラマみたく、そんな簡単に、犯罪行為をしますかね。下手をすると殺人罪とかになりかねないのに」
 良太は一つ息を吐いて言った。
 すると藤堂は、いーや、と首を横に振る。
「事実は小説よりって言うでしょ? 黒幕のXには工藤さんに対する恨みつらみという動機があった」
「恨みつらみか。工藤って、ほんと叩けば埃だらけになりそうだもんな」
 良太の何気ない一言に、藤堂は笑う。
「まあ、できる男の勲章でもあるよな、恨みつらみ妬み。古巣のMBC時代から抜きんでて功績を残した半面、強引なやり方に反感を買っていたかも知れないし」
「大いに買ってたんじゃないですか? そうか、MBC時代の人間ってこともあるわけか」
 良太は何となく工藤が、調べてから話す、と言った理由がそのあたりにあるのかも知れないと思う。
「まあ、とにかく、そこいら辺、ちょっと調べてみるよ。もし、小宮山がクロなら、ドラマ制作側でも考えなくちゃいけなくなるからね」
「はい、よろしくお願いします」
 お任せあれ、とウインクする藤堂とカフェの外で別れ、良太はまた世田谷のスタジオへと向かう。
「あ、モリー? これから戻るけど、どう? そっちは」
 良太はハンドルを回しながら、ブルートゥースで携帯をハンズフリーにして、尋ねた。
「今のところ、問題ないです」
「わかった。引き続き注意してて」
「Copy That!」
 足早にスタジオに戻った良太だが、その日の撮影は何も問題なく終わった。
「お疲れ様。何だか、忙しそうだね」
 帰りがけ、良太は天野に声をかけられた。


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